マルチプレックス遺伝子検査陰性/IHC陽性ALK融合遺伝子陽性肺癌に対するALK-TKIの治療効果を検討する多施設共同後ろ向き観察研究(LOGIK2502/ALKEY)
NEJM20262121.臨床研究について
当院では、最適な治療を患者さんに提供するために、病気の特性を研究し、診断法、治療法の改善に努めています。その一つとして、当院では、現在マルチ遺伝子パネル検査陰性/免疫染色(IHC)検査陽性であったALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺癌の患者さんを対象として、治療効果やこのような検査結果になる患者さんの特徴に関する「臨床研究」を行っています。
今回の研究の実施にあたっては、九州大学医系地区部局観察研究倫理審査委員会の審査を経て、研究機関の長より許可を受けています。この研究が許可されている期間は、2028年3月31日までです。
2.研究の目的や意義について
肺癌の中の1つである非小細胞肺癌は最も患者数が多く、様々な治療法の開発が進められています。非小細胞肺癌の患者さんでは、特定の遺伝子変異(ドライバー遺伝子変異といいます)が見つかることがあり、見つかったドライバー遺伝子変異の種類によって治療法が選択されます。
本研究の対象となるALK 融合遺伝子は、非小細胞肺癌の約 3-5%に見つかるドライバー遺伝子変異で、非小細胞肺癌の中でも腺癌と呼ばれる種類に多くみられます。
ALK融合遺伝子陽性が判明した患者さんの治療法としては、ALK阻害薬と呼ばれる治療薬が使用されます。日本では2012 年にクリゾチニブが承認され、その後セリチニブ、アレクチニブ、ロルラチニブ、ブリグチニブといった薬剤が承認されてきました。ALK阻害薬は従来の抗がん剤治療と比べ治療効果が劇的に向上し、ALK 融合遺伝子陽性肺癌に対する重要な薬剤として広く使用されています。
このALK融合遺伝子の検査方法は複数の種類があり、その代表的な検査方法が免疫組織化学染色(immunohistochemistry; IHC)検査とマルチ遺伝子パネル検査です。IHC検査は、がんの組織を染めてたんぱく質の発現を確認する検査です。マルチ遺伝子パネル検査は、がん組織や血液からDNAなどを取り出し、「がん関連遺伝子」に変化があるかどうかを調べる検査です。1回の検査で複数の遺伝子変異を同時にまとめて調べことができるため、現在広く用いられています。しかし、ALK融合遺伝子に関しては、マルチ遺伝子パネル検査はIHCや他の検査方法と比べてALK融合遺伝子を見逃してしまう可能性が指摘されています。そのため、マルチ遺伝子パネル検査で「陰性」という結果が出た場合でも、念のためIHC検査などの追加検査を行うことが推奨されています。しかしながら、マルチ遺伝子パネル検査では「陰性」、IHC検査では「陽性」と診断された患者さんについてALK阻害薬による治療効果の報告はありません。
そのため、本研究ではマルチ遺伝子パネル検査「陰性」かつIHC検査「陽性」の患者さんを対象として、ALK阻害薬の効果を確かめることを目的としています。また、患者さんの過去に採取した検体を使用して新たに遺伝子解析を行い、ALK融合遺伝子の有無ついて再度検討を行います。同時期に検査が実施されたマルチ遺伝子パネル検査「陽性」の患者さんの背景情報を集めて、比較することも予定しています。
3.研究の対象者について
本研究では2019年6月1日から2025年3月31日までにALK 融合遺伝子の検査を実施した肺癌患者さんのうち以下のどちらかを満たす方を対象とします
1)マルチ遺伝子パネル検査陰性かつIHC陽性であった ALK 融合遺伝子陽性の周術期及び進行期の患者さん:約40名(うち九州大学病院:4名)
2)マルチ遺伝子パネル検査でALK融合遺伝子が陽性と確認されている進行期の患者さん:約100名(うち九州大学病院:10名)
研究の対象者となることを希望されない方又は研究対象者のご家族等の代理人の方は、研究責任者又は担当医までご連絡ください。
4.研究の方法について
この研究を行う際は、カルテより以下の医療情報を取得します。医療情報はEDC(Electronic Data Captureシステム)を用いて、データセンターである九州臨床研究支援センター(CReS九州)へ提供されます。
〔取得する情報〕
以下の情報を収集する予定です。「3.研究の対象者について」の1)に該当する方は、以下の表のうち①②③の情報を、2)に該当する方は①②の情報を取得します。
| ① 患者背景 | PS、年齢、性別、喫煙歴、病期、組織型、治療ライン、PD-L1(TPS)、転移臓器、脳転移の有無など |
| ② 検査・検体関連 | マルチプレックス検査関連(検体採取日、検査提出日、検査の種類、検体の種類(生検検体、手術検体、気管支洗浄検体、胸水検体、その他(詳細))、診断時の生検臓器(原発巣、転移巣、リンパ節、胸水、血液、その他(詳細))、検体処理方法、腫瘍量)、FISH結果、IHC関連(検査提出日、検体の種類(生検検体、手術検体、気管支洗浄検体、胸水検体、その他(詳細))、スコア)、CGP検査歴(研究目的も含む)・結果など |
| ③ ALK-TKIの有効性関連 | ALK-TKI投与あり/なし(なしの場合:理由)、ALK-TKIの種類、治療歴を含む臨床経過 (ALKーTKI投与開始日、ALK-TKI投与終了日、腫瘍縮小効果、PD確認日、ALK-TKI最終投与確認日、最終フォローアップ日、転帰確認日、後治療)など |
〔利用又は提供を開始する予定日〕
各研究機関における研究許可日以降
また、各施設に保管されている腫瘍検体は、各施設において個人情報を加工し、レターパックなど追跡可能な方法にて九州大学病院へ収集します。収集された腫瘍検体は、同様に追跡可能な方法にて北海道大学病院へ送付し、北海道大学病院において以下の解析を実施します。
HE染色およびALK IHC染色およびそれら染色標本のデジタル画像化と融合遺伝子解析(RNAシークエンスデータの取得に関しては、北海道大学病院から外部解析機関へ外注委託します[パネル解析はDNAチップ研究所、WTS解析はタカラバイオ社を予定])。ALK IHCの病理学的評価については中央判定を実施します。
CReS九州において、測定結果と取得した情報の関係性を統計解析により分析し、真のALK融合遺伝子陽性に対する影響を明らかにします。
他機関へ資料・情報の送付を希望されない場合は、送付を停止しますので、ご連絡ください。
5.研究への参加を希望されない場合
この研究への参加を希望されない方は、下記の相談窓口にご連絡ください。
なお、研究への参加を撤回されても、あなたの診断や治療に不利益になることは全くありません。
その場合は、収集された情報などは廃棄され、取得した情報もそれ以降はこの研究目的で用いられることはありません。ただし、すでに研究結果が論文などで公表されていた場合には、完全に廃棄できないことがあります。
6.個人情報の取扱いについて
研究対象者のカルテの情報や腫瘍検体をこの研究に使用する際には、研究対象者のお名前の代わりに研究用の番号を付けて取り扱います。研究対象者と研究用の番号を結びつける対応表は当院の規定に従って保管されます。
また、この研究の成果を発表したり、それを元に特許等の申請をしたりする場合にも、研究対象者が特定できる情報を使用することはありません。
この研究によって取得した情報は、当院の責任者の下、厳重な管理を行います。
ご本人等からの求めに応じて、保有する個人情報を開示します。情報の開示を希望される方は、ご連絡ください。
7.試料や情報の保管等について
〔試料について〕
この研究において得られた研究対象者の腫瘍検体は原則としてこの研究のために使用し、研究終了後は、5年間保存した後、研究用の番号等を消去し、廃棄します。最初の1年間は北海道大学病院 先端診断技術開発センターで一時保管され、その後九州大学大学院医学研究院消化器・総合外科学分野の医局で残りの期間を保管します。
〔情報について〕
この研究において得られた研究対象者のカルテの情報等は原則としてこの研究のために使用し、研究終了後は、各研究機関で規定された場所で10年間保存した後、研究用の番号等を消去し、廃棄します。
しかしながら、この研究で得られた研究対象者の試料や情報は、将来計画・実施される別の医学研究にとっても大変貴重なものとなる可能性があります。そこで、前述の期間を超えて保管し、将来新たに計画・実施される医学研究にも使用させていただきたいと考えています。その研究を行う場合には、改めてその研究計画を倫理審査委員会において審査し、承認された後に行います。研究代表者や他の研究機関の研究者は資料及び情報を利用した研究を行う可能性があります。
8.この研究の費用について
この研究に関する費用は、中外製薬株式会社からの共同研究費でまかなわれます。共同研究費は契約に基づいて、中外製薬株式会社からCReS九州へ支払われます。また、この研究に登録された患者さんの数に応じてCReS九州から九州大学病院及びその他の共同研究機関に研究協力費が支払われます。
9.利益相反について
研究を行う上で、特定の企業などとの経済的な関係が、研究の進め方や結果の解釈に影響を与えてしまう可能性を「利益相反(Conflict of Interest: COI)」と呼びます。
本研究は中外製薬株式会社との共同研究であり、中外製薬株式会社は、研究計画書の草案レビューや会議の運営支援など、研究を円滑に進めるための補助的な役割として関与しています。研究結果の信頼性に関わる「医療情報の収集管理」および「データの統計解析」については、一切関与いたしません。
また、本研究の信頼性を守るため、すべての研究者は、企業等との関係を所属する研究機関に申告しています。その内容は、各機関に設置された利益相反委員会などの中立な組織によって厳格に審査され、研究の公平性が損なわれないことが確認されています。
10.研究に関する情報の公開について
この研究に参加してくださった方々の個人情報の保護や、この研究の独創性の確保に支障がない範囲で、この研究の研究計画書や研究の方法に関する資料をご覧いただくことができます。資料の閲覧を希望される方は、ご連絡ください。
また、この研究では、学会等への発表や論文の投稿により、研究成果の公表を行う予定です。
11.特許権等について
この研究の結果として、特許権等が生じる可能性がありますが、その権利はあなたには属しません。また、その特許権等を元にして経済的利益が生じる可能性がありますが、これについてもあなたに権利はありません。
12.研究を中止する場合について
研究代表者の判断により、研究を中止しなければならない何らかの事情が発生した場合には、この研究を中止する場合があります。なお、研究中止後もこの研究に関するお問い合わせ等には誠意をもって対応します。
13.研究の実施体制について
この研究は以下の体制で実施します。
【研究代表者/研究事務局】
九州大学病院 呼吸器外科・助教 松原 太一
【研究機関】
| 研究機関の名称 | 研究責任者氏名 | 研究機関の長 | 役割 |
| 九州大学病院 呼吸器外科 | 松原 太一 | 中村 雅史 | 総括 |
| 北海道大学病院 先端診断技術開発センター※1 | 畑中 豊 | 南須原 康行 | 検査・解析 |
| 聖マリアンナ医科大学病院 呼吸器内科 | 森川 慶 | 大坪 毅人 | 試料・情報の収集 |
| 飯塚病院 呼吸器腫瘍内科 | 吉峯 晃平 | 本村 健太 | 試料・情報の収集 |
| 琉球大学病院 第一内科 | 古堅 誠 | 鈴木 幹男 | 試料・情報の収集 |
| 熊本大学病院 呼吸器内科 | 猿渡 功一 | 平井 俊範 | 試料・情報の収集 |
| 大分大学医学部附属病院 呼吸器・感染症内科 | 大森 翔太 | 井原 健二 | 試料・情報の収集 |
| 鹿児島大学病院 呼吸器内科 | 田中 謙太郎 | 田川 義晃 | 試料・情報の収集 |
| 済生会宇都宮病院 呼吸器内科 | 仲地 一郎 | 篠﨑 浩治 | 試料・情報の収集 |
| 静岡県立静岡がんセンター 呼吸器内科 | 和久田 一茂 | 小野 裕之 | 試料・情報の収集 |
| 産業医科大学 第2外科 | 竹中 賢 | 上田 陽一 | 試料・情報の収集 |
| 熊本中央病院 呼吸器内科 | 佐伯 祥 | 那須 二郎 | 試料・情報の収集 |
| 埼玉県立がんセンター 呼吸器内科 | 渡辺 恭孝 | 影山 幸雄 | 試料・情報の収集 |
| 秋田厚生医療センター 呼吸器内科 | 守田 亮 | 柴田 聡 | 試料・情報の収集 |
| 大阪国際がんセンター 呼吸器内科 | 國政 啓 | 松浦 成昭 | 試料・情報の収集 |
| 一般社団法人九州臨床研究支援センター
(CReS九州)※2 |
宮下 孝志 | 中西 洋一 | データセンター・統計解析 |
※1試料の保管・解析のみを行う機関であり、北海道大学病院の患者さんの情報は収集しません。
※2情報の解析を行う機関です。
【業務委託先】
| 委託先 | 委託内容 |
| 企業名称:株式会社 DNAチップ研究所
所 在 地:神奈川県川崎市中原区新丸子東3丁目1200 KDX武蔵小杉ビル 9階 監督方法:北海道大学との契約に基づき、管理・監督される。 |
遺伝子解析 |
| 提供する試料等:腫瘍検体 | |
| 企業名称:タカラバイオ株式会社
所 在 地:滋賀県草津市野路東七丁目4番38号 監督方法:北海道大学との契約に基づき、管理・監督される。 |
遺伝子解析 |
| 提供する試料等:腫瘍検体 |
14.相談窓口について
この研究に関してご質問や相談等ある場合は、下記担当者までご連絡ください。
| 相談窓口 | 担当者:九州大学病院 呼吸器外科 松原 太一
連絡先:〔TEL〕092-642-5466(内線 2758) 〔FAX〕092-642-5482 メールアドレス:matsubara.taichi.288@m.kyushu-u.ac.jp |
【留意事項】
本研究は九州大学医系地区部局観察研究倫理審査委員会において審査・承認後、以下の研究機関の長(試料・情報の管理について責任を有する者)の許可のもと、実施するものです。
九州大学病院長 中村 雅史
臨床研究(オプトアウト)一覧へ

