熊本大学大学院生命科学研究部 呼吸器内科学分野

熊本大学医学部付属病院 呼吸器内科学分野

教授挨拶

教授からのご挨拶

教授 興梠 博次

私たちの教室の理念は、地域・国際社会および患者に貢献できる診療・教育・研究を実施することです。

 熊本大学呼吸器内科は、臓器別診療部門への組織改変に伴い設立されて約10年になります。お陰様で、多くの優れた医師が育ち、国内外の大学および関連病院で活躍をしており社会的にも大きな貢献をしています。また、研究も充実しつつあります。現在、私たちの呼吸器内科は、学内はもとより関連病院のご協力で診療・教育・研究連携が充実し、患者様の満足度は十分に得られていると推察します。また、厳しい治療に積極的に参加されている患者・家族の皆様に心より敬意を表します。

 呼吸器疾患は、肺炎をはじめとする感染症、肺がん等の悪性腫瘍、喘息等のアレルギー性疾患、たばこによる慢性閉塞性肺疾患(COPD)、原因不明の間質性肺炎、膠原病に伴う間質性肺炎、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、薬剤性肺炎、心不全や腎不全にともなう肺水腫、等々、多彩な疾患が存在します。したがって、その診療には、幅広い医学知識と技能が必要で、医師修練には多くの時間と努力が必要です。それにもかかわらず熊本大学では、多くの若手医師が呼吸器内科専門医を目指して活躍していることは、大きな誇りであり、教室員、指導いただいている関連病院、同門の先生に深く感謝申しあげます。

 私たちは、今後も内科をベースにした呼吸器内科医として科学的な思考を持って診療し、患者様の心も理解しながら頑張っていきます。また、研究によって現在の治療をさらに発展させていく所存です。今回、呼吸器内科の現在と未来について以下にまとめました。

診療について

診療:高度な臨床能力を持つ国際的に評価される呼吸器内科診療を実践

私たち呼吸器内科は、附属病院の「理念・方針・指針集」に記載されている「医師のための診療基本指針」の原案を作成しております。その「基本指針」に従った診療を実施していきます。
 科学的思考を持った医師・教育者・研究者を育成し、チーム医療・診療連携により診療の機能と効率を高めて先端医療に参加しています。この試みで、呼吸器内科学の臨床能力が国際的レベルにあると自負しており、今後、臨床的研究で世界をリードしていくことを目指します。
 呼吸器疾患は、膠原病や感染症など全身疾患の症状として肺病変が発症することも多く、呼吸器専門の診療とともに全体像が把握できる一般内科および救急・集中治療の臨床能力も必要です。そのために、幅広く内科診療を指導できる医師を育成しています。
 私たちは、幅広い知識と技術をもって連携ネットワークを利用し、患者・家族の心も理解できるように日々努力し、患者様ひとりひとりに柔軟に対応できる最大の努力をしています。

教育について

教育:国際的に評価の高い診療・教育・研究能力を兼ね備えた医師の育成

 医師の育成は、卒前教育、卒後研修、生涯学習にて成り立ちます。卒前教育では、育規格の統一を行い、診療参加型臨床実習にて基本的な臨床技能、問題対応能力、社会性を獲得できるレベルに到達させ、研修医としての臨床の現場にスムーズな移行ができるように努力しています。呼吸器内科では、学生・研修医・専門修練医のために「呼吸器内科臨床テキスト」を作成・改訂し、今年、「シンプル呼吸器学」(南江堂)を出版しました。医師国家試験に対応できる教科書として作成しましたが、呼吸器内科学の基本事項を臨床現場に即した編集をしましたので研修医、専門医にも役立つものと自負しています。

 研修医教育は、月平均3−4人の割合で、2−3ヶ月の単位で呼吸器内科を研修しています。驚くべきことに、研修医は、短期間で最低限必要な内科・呼吸器内科の能力を獲得しており、私たちの教育プログラムが充実していることが示唆され、研修医からも高い評価を受けています。研修を希望の方は、是非一度、私たちの呼吸器内科を訪問してください。
 専門修練医(後期研修医)育成では、呼吸器内科専門医を目指し、診断学、検査手技、画像読影、治療の領域で総合的に診療ができる医師を育成しています。また、専門を決めずに内科全体の診療をしたいという希望者には、他の診療科あるいは関連病院と連携して希望に沿う指導をしますので問い合わせ下さい。
 大学院教育では、研修医あるいは専門修練医として身に付けた問題提起・解決能力を研究にも応用できる創造的人材を育成しています。社会人大学院生の身分を選択することで、診療をしながら大学院での研究も可能です。熊本大学の大学院に在籍して他の大学での研究も可能で、現在、慶應義塾大学、筑波大学、東京慈恵医科大学にて研究のために留学をしています。
 これらの教育過程において、科学的で独創的で総合的な思考を展開できる自立した品格の高い医師・研究者・指導者を育成し、国際的にも高い評価を得られる大学・教室づくりを目指しています。

関連病院と医師育成について

関連病院と医師育成:地域診療連携と教育連携の出来る品格の高い医師の育成

 呼吸器内科は、熊本県内のほとんどの中核病院に人材を派遣し、診療の連携はもちろんのこと、医師育成の連携、臨床研究の連携を実施しています。出身大学、出身の診療科を問わず、一般内科医を含めて、研究会を開催し交流を深め、地域の診療レベル向上のために努力しています。
 全国規模で情報を交換する為に、国立がん研究センター東病院、国立国際医療研究センター等に国内留学をさせ、トップレベルの診療の交流を計っています。

研究について

研究:独創性が高く国際的に貢献できる研究

 内科・呼吸器内科として重要な疾患について、国際的に貢献できる独創性の高い研究を目指します。私たちは、症例を丁寧に観察し、そこから得られたデータを集計し、その情報を解析して研究の方向性を決定して発展させる研究手法を実践しています。
 喘息の研究では、アレルギー責任細胞として重要な役割を持つリンパ球や肥満細胞をコントロールして、アレルギー疾患の根治療法を目指しています。これらのアイデアは、膠原病の免疫責任細胞の研究、膠原病に伴う間質性肺炎の責任細胞の研究にも発展できると考えています。また、特殊な喘息である、アスピリン喘息の発症予測、Eosinophilic granulomatosis with polyangitis:EGPA(旧病名:Churg-Strauss症候群)の病態解明にもつながると考えられます。咳の研究では、気道炎症における気道求心性神経刺激物質の解明を継続し、炎症の原因治療と刺激物質の制御をすることを目標に研究しています。
 原因不明の間質性肺炎について診断および治療に苦慮しますが、現在、その病態を臨床経過からまとめて責任となる細胞およびサイトカインを予測して治療への応用を考えています。急性呼吸促迫症候群(ARDS)の呼吸管理に関する研究、発症病態に関する研究を臨床データから解析をすすめています。また、たばこ関連の肺疾患について樹状細胞を中心に解析をすすめ、また、香川大学医学部との共同研究でガレクチン9がARDSモデルにおいて治療効果を持つことを確認し、COPDの研究にも展開しています。
 肺癌の内科的治療では、国内・国際チームと連携して新しい治療法についての治験に参加しています。また、EGFR遺伝子異常ならびにALK融合遺伝子による肺癌に対する分子標的治療においても、その有効性と危険性の予測の研究を展開しており、癌細胞の特性の解明と根治療法を目指しています。さらには、肺癌の早期発見、予防を検診業務に参加しながら実践しています。
 呼吸器感染症では、薬剤耐性緑膿菌に対して生体防御能を改善させて治療に還元するためiPS細胞から作成した樹状細胞に生体防御因子を賦活させる研究をしています。
 再生医療は、呼吸器内科の領域でも重要な分野です。間質性肺炎、COPD、CPFE(combined pulmonary fibrosis and emphysema)、肺癌などの治療困難な疾患では、肺の再生医療が必要と考えられます。これらの疾患の進行を阻止するためには肺の発生学を応用することが重要であり、また、再生細胞による治療の研究が必要です。現在、疾患の病巣から特殊な因子を検出すべく研究を進めています。

 以上、私たちの呼吸器内科の理念および基本方針に沿って、これまでの歴史と今後の方向性を示しました。多くの皆様と有意義な交流ができることができますならば幸甚に存じます。

興梠教授経歴

昭和52年3月熊本大学医学部卒業
昭和52年4月熊本大学医学部第一内科入局・同附属病院研修医
昭和55年10月熊本大学医学部集中治療部(1年間)
昭和56年10月熊本大学医学部第一内科
昭和60年7月熊本大学医学部第一内科助手
昭和61年1月熊本大学より医学博士(乙497号)授与さる
昭和61年7月カリフォルニア大学サンフランシスコ校(2年間)
心臓血管研究所へ留学:Jay A. Nadel教授(気管支喘息および咳嗽の研究)
昭和63年7月熊本大学医学部第一内科助手
平成4年4月医局長(平成6年3月31日まで)
平成6年6月講師
平成15年4月熊本大学医学部附属病院呼吸器内科医局長
平成17年10月1日熊本大学大学院医学薬学研究部呼吸器病態学分野 教授就任
平成19年4月熊本大学医学部附属病院副病院長併任(2年間)
平成20年4月熊本大学医学部附属病院総合臨床研修センター長併任(1年間)
平成22年1月組織改変により熊本大学大学院生命科学研究部呼吸器病態学分野 教授
現在に至る
主な研究テーマ内科学、呼吸器内科学、特に気道疾患、気管支喘息、咳嗽、アレルギー免疫学、気道の薬理学、呼吸生理学
学会
  • 日本内科学会(認定医、指導医)
  • 日本呼吸器学会(理事、評議員、専門医、指導医)
  • 日本アレルギー学会(代議員)
  • 日本肺癌学会、日本感染症学会、日本炎症・再生医学会
  • 日本呼吸器内視鏡学会
  • American Thoracic Society、European Respiratory Society
  • 平成4年度日本胸部疾患学会(現、呼吸器学会)奨励賞
  • 2000年アストラゼネカ喘息研究奨励助成賞
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